「長崎居留地まつりアーカイブ&トーク」パネルディスカッションレポート

はじめに

令和6年(2024)9月1日(日)14時30分より、長崎聖三一教会で長崎居留地まつりプレイベント「長崎居留地まつりアーカイブ&トーク」が開催されました。第1部は「クロストーク〜居留地まつりのこれまで〜」として、長崎居留地まつり実行委員会委員長の桐野耕一氏と同事務局長の梅元建治氏が登壇し、平成8年から続く長崎居留地まつりの軌跡を振り返りました。第2部は「パネルディスカッション〜居留地まつり30周年に向けて」と題して、ゲストに地域活性・地方創生型インフルエンサーの美咲氏、YouTuberの品川正之介氏を迎えて、これからの居留地まつりのあり方などについて熱く議論が交わされました。第3部「2024長崎居留地まつりについて」では今年のみどころの紹介が行われれました。

本稿では、第2部の詳細についてご紹介いたします。

登壇者

桐野耕一(長崎居留地まつり実行委員会委員長/長崎居留地歴史まちづくり協議会会長)
岩本諭(長崎居留地まつり実行委員会事務局/(株)つくるのわデザイン代表取締役)
美咲(地域活性・地方創生型インフルエンサー)
品川正之介(YouTuber)

パネルディスカッション〜居留地まつり30周年に向けて〜

岩本 まずはパネラーの紹介をします。私は学生時代に斜面地の研究をしたことがきっかけで居留地エリアに移住しました。初めて参加した居留地まつりでは「ききカステラ」を担当で開催した思い出があります。

美咲 私は長崎の魅力をInstagramで発信する活動をしています。

品川 大学時代に長崎のことが大好きになり、それがきっかけで移住しました。最近は、斜面地暮らしの日常を世界に向けて英語でYouTube配信しています。

岩本 長崎居留地まつりは来年30周年を迎えます。今回は情報発信が得意な2名を特別ゲストとしてお招きしました。第1部の感想を聞きたいと思います。

美咲 居留地まつりに来たことがなかったけど、大人がワクワクして物事をつくっていく姿にエネルギーをもらいました。そういう様子をもっと発信すると良いと思います。この町並みも素晴らしいけど、歴史のことを聞いて目線が変わりました。

品川 このまつりを作ってきた先人の努力がありがたいと感じます。自分も移住してすぐに居留地まつりに関わらせてもらい、楽しませてもらいました。居留地まつりは「関わりしろ」が多く、開かれたイベントだと感じています。桐野さんがいつも話してくれていますが、外の人や若い人がチャレンジできる場だと思います。

岩本 居留地まつりも時代とともに変わってきているように感じますが、桐野さんはどう見ていますか。

桐野 平成8年から現在の居留地まつりの形式になりました。まつりが市役所主導から住民主導になっていくなかで、梅元さんとの出会いは大きかった。彼は地元出身で、福岡でまちづくりに関わる仕事をしていたのですが、家庭の都合で地元に帰ってくるタイミングで私は出会うことができました。それが「長崎さるく」のタイミングとも重なることになり、「長崎さるく」が居留地まつりのエンジンになりました。

岩本 外から見たときに、居留地まつりの可能性や改善点があれば教えて欲しいです。

品川 「参加しろ」が多いのは可能性で、歴史的な場所を舞台に遊ぶことができるのが魅力です。

岩本 今日も教会でやらせてもらっています。本当に絵になる場所で、これは本当にアドバンテージですね。

品川 色んな人を案内することが多いですが、とにかく絵になる場所が多いです。

美咲 外の人が挑戦できる場所ということが良いですね。洋館を使う手続きなど、固いイメージがありました。こうして地域に関わることで使いやすくなるので、その辺りを伝えられたらいいなと思います。

品川 文化財を使うときには申請が大変です。居留地まつりではその辺のハードルをを下げて、文化財の保存活用のアイデア発見の場となればいいなと思います。

桐野 手続きは確かに面倒なことが多いですね。実際にいま、様々な手続きを事務局で行っているのでハードルが下がっていると思います。

岩本 先輩のおかげで、居留地まつりならどこでも借りることができるということは確かにありますよね。そこの発信を強化して、今後はマッチングの機会が広がると良いと思います。

品川 長崎に移住して思ったのは「長崎イベント多すぎ問題」です。それぞれをどう周知して集客していくかをしっかり考えないといけません。それは、居留地まつりが何を志向していくかによると思います。

桐野 社会実験の場で良いんだと思います。ここで暮らした先人たちが我々をバックアップしてくれているような気がするんです。この地域には歴史の物語がたくさんあります。

岩本 ここにはチャレンジの蓄積があります。居留地まつり実行委員会で先輩から頂くアドバイスは、貴重なノウハウであると感じています。

桐野 まつりでのイベント企画は、やはり居留地との関わりがあるものでないといけないと思っています。

岩本 その辺も含め、PRをどうしていくかが課題ですね。

品川 やりたい人が、継続的に思いを伝えていくことが大事だと思います。長崎でYoutube発信をしていて思うことは、「地域が発信されることを歓迎するかどうか」を明確にすると良いと思います。

美咲 認知度についてですが、ネット上に居留地まつりの情報が少ないですね。これまでにやったことをしっかりと情報として残し、まつりを創り上げていく様子をリアルに発信して、応援してくれる人を増やしていくことが重要だと思います。地元の人だけが知っている写真スポットや構図を外の人が知ることができるというのも良いですね。

桐野 若い人が関わるようになって発信力はついてきましたが、まだまだ足りないと感じる部分もあります。記録ということはとても大事だと思います。

岩本 この地域はみんなで作ったグランドデザインがあります。居留地まつりとグランドデザインの関係を深めていきたいですね。

桐野 グランドデザインを策定するにあたり、長崎居留地歴史まちづくり協議会を組織しました。そのきっかけは長崎市歴史的風致維持向上計画の国からの認定。グランドデザインはみんなで協議をして作り上げたまちづくりの計画です。我々はグランドデザインを教科書にして、居留地まつりを中心に様々な取り組みを行っています。

岩本 グランドデザインがあることで、取り組みの一本筋が通ります。これが30周年の柱になるんだろうと思います。

梅元 30周年に向けて、もっともっと若い人に関わって欲しいと思います。早い段階から企画を外から募集するようにしていきたいですね。個人的には現代アートフェスティバルにしたいと思っています。この街がもっと新しい価値を受け入れるようにしていけば、それは先人からも評価してもらえると思います。

桐野 会場に若い人もたくさん来ているので、感想を聞いてみたいですね。

(会場にマイクを振る)

井須 私はアーティスト活動しています。これから何ができるかを考えていきたいです。 

諸岡 私は長崎大学のGP(グローカル人材育成プログラム)に所属しています。長崎出身で、他の色んな街を見るのですが、やはり長崎が一番だと感じています。今までやってきたことを、やっていくことが大事だと思います。このエリアに関わるのが、私は今回が初めてでした。

永野 先ほども話題になりましたが、記録をしっかり残していくことに取り組んでいきたいです。

徳久 歴史の継承がなされていることが大事だと感じています。

竹下 居留地まつりに関わって14年になります。以前は桐野さん、梅元さんが協力に引っ張っていた記憶があります。そこに岩本さんなどが加わって、世代交代ができていることが成功の秘訣なのかなと思います。

森山 東京から移住して4年になります。イベント業者が入るのではなく、手作り感があってとても良いと思います。

平山 市の施策を居留地まつりに重ねていくこと、まちなかの他のエリアと連携していくこと、DXを活用してノウハウをしっかりと残していくことが必要であると思っています。

岩本 最後に、登壇者のみなさんに本日の話を聞いて、居留地にエールを送っていただきたいと思います。

美咲 今日参加してみて、率直に居留地まつりが面白そうだと感じました。みなさんの熱意を発信していけたらと思います。

品川 長崎は「生産のまち」だと思っています。「消費」したければ大都会に行けばいい。長崎は余白がたくさんあるので、これを活用してチャレンジ・生産のまちになっていけばいい。一人一人のキャラが濃い地域ではありますが、若い人には負けずに頑張って欲しいですね。

桐野 今日はみなさんから良い言葉をたくさんもらいました。継続することが一番大事なのかもしれないですね。今年の居留地まつりもどうぞよろしくお願いします。

最後に

登壇者や会場のみなさんからは、居留地まつりの情報をしっかりとアーカイブとして残し、創り上げていくプロセスやDX化も含めて戦略を持って発信していくことの重要性が指摘されました。記念すべき30周年に向けて、これまでの取り組みの記録を洗い出し、関係者一同でしっかりと振り返ってうえで、まちづくりと連動しながら長崎居留地まつりをどう指向していくかについて議論を重ねていきたいと思います。

ご参加いただいた皆様に心より感謝を申し上げます。

(文・写真)長崎居留地歴史まちづくり協議会事務局 取材日:令和6年(2024)9月1日